世界中からビートを集めて、新しいジャンルを作るーMURAKAMIGOインタビュー
もしも「大箱なんてダサい曲しかからないんでしょ」とか「今どきクラブなんてオタクが行くところでしょ」とか、あるいは「自分は音楽の趣味がいい」なんて思っているとしたら、いちどMURAKAMIGOのDJを聞きに行ってみてほしい。煌びやかなディスコでもアンダーグラウンドなクラブでも、ヒップホップからアニソンへ、パンクからEDMへと縦横無尽にミックスしていくスタイルに、最初は驚き呆気にとられながらも、いつしか思わず笑顔で手を上げてしまうはずだ。
人呼んで「フロアのネ申」。その底抜けに明るいプレイスタイルは、かつて黎明期の名古屋のヒップホップ・シーンを支えた存在ながら、自らメジャーシーンとの架け橋となってきた彼自身の、アートとビジネス、メジャーとアンダーグラウンド、チャラ箱と音箱、クラシックとTOP40の間のせめぎあいを、音楽とパーティへの愛でエンターテイメントへと昇華させてきた結果なのかもしれない。
DJ歴28年目にして、今年名古屋から東京へと拠点を移し、また韓国のフェス「ULTRA KOREA」への出演も果たした彼の今の心境を聞いた。
interview with MURAKAMIGO
世界中からビートを集めて、新しいジャンルを作る
text&edit:Yoshimi Ishiguro photo:Satomi Enomoto&Yoshimi Ishiguro
音楽が好きになったのは中学生時代からですね。友達のお兄さんに、東京の大学に行ってる人がいて、その人がいつも最新の流行を教えてくれたり、地元にサーフィンやスケボーしてるおしゃれな先輩がいたこともあって、音楽とファッションにどっぷりはまっていたんです。特にヒップホップが大好きで。ビースティ・ボーイズやRUN DMCが流行り出す前から聞いてました。
クラブに通い出したのは大学に入った頃から。レコード屋でフライヤーを見て、ヒップホップが聞けそうだと思って、東新町にあったクラブに行ってみたの。それがBEATKICKSっていう、OBRIGARD/ILLMARIACHIのHAZU君と、ラッパーのTwiGyが主催していたパーティだった。Public Enemyとか大好きな曲が延々とかかってて…。BEATKICKSのそのパーティには高木完さんが来たこともあって、本当に衝撃を受けましたね。それから「自分の居場所はここだ」って感じて、週4くらいでクラブに遊びに行くようになりました。
当時はヒップホップのパーティでも、ディスコとかダンス・クラシックスとか古い曲もよくかかってて。要するにヒップホップの元ネタですよね。「あっ、こっちが原曲なんだ」って分かると面白くなって、ますますはまっていった。ハウスも日本に入ってきたばかりで盛り上がってた時期だったから、ハウスもチェックしたり。昔から雑食というか、これはヒップホップじゃないからダメ、みたいな聞き方はそんなにしてなかったかな。
■DJを始めたのはいつから?
クラブに行き始めた頃は何もかも刺激的で、めちゃくちゃ面白かったんですよ。でも、さすがに週4で遊んでると「俺ならあの曲かけるのにな」とか思いだすじゃないですか。それで自分もDJやってみようと思ったのが、19か20歳の時ですね。
新栄の「トランスワールド」っていうクラブのセカンドルームでやらせてもらえることになって。家でばっちり練習して自信満々で臨んだんだけど、いざ現場に行ったら、あれ?音も聞き取れんし?って、もうさんざん。友達も来てくれてたのに全然ダメで。
メインに行ってみたら、ハウスのパーティなのにアンビエントみたいなビートレスの曲がかかっている。でもお客さんは全然帰らない。今でもMagoとかでDJやってるGeorge.Sさんなんだけど、違いを見せつけられたと思いましたね。音楽には詳しいと思ってたけど、自分はやっぱり素人なんだって。
その後、どこかの店でレギュラーでDJやってみたいなと思いだして。でも、当時はプロのDJとアマチュアははっきり分かれていて扱いが違ったの。自分のミックステープ持って、DJやらせてくださいって売り込みに行っても「どこかでレギュラーやってるの?」って聞かれて、いいえって言うとそれで終わり。逆に言うと、実績を作りさえすれば素人扱いされないってことだから、とにかくどこかに入り込もうって思って。
たまたま高針の店でDJ募集してたんで「もう3年くらいやってます」とか必死でサバよんで入れてもらったの。ただ、繁華街からはだいぶ離れてるわけで、漫然とやってても誰も来ないから、自分で色々企画して。学生パーティの延長みたいなノリだったけど、友達もいっぱいいたからけっこう来てくれてね。続けてたら栄の方でも「高針ですげえ客入れてる奴がいるらしいぞ」って噂になったらしく。(笑)前に門前払いされた店でも「うちでやってよ」って。それからはトントン拍子で。
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