夜も昼も、人が出会いつながる祝祭をーDJ Matsuiインタビュー
国際協力とクラブイベントをかけ合わせる
■LEGENDが終わってからは、DJはお休みしていたんですか。
松井:誰かに呼んでもらえればやったけど、自分のイベントはLionまでやってないですね。
■Lionは、収益をどこかに寄付するチャリティのイベントでしたよね。
松井:そうそう「ドイツ国際平和村」という団体に寄付してました。アフリカや中東とか、内戦が起きたりして貧しい国では、医療が不足してちょっとした病気や怪我でも命を落とす子どもたちがいるんです。そういう子たちをドイツを中心とした先進国へ連れてきて、治療して親元に返すということをやってるNGOです。
■なんでまた、チャリティをしようと考えたんですか。
松井:LEGENDが終わってから、いちど音楽を自分の生活の中から外してみようと思ったんです。
そうなった時に、自分に何があるんだろうと思っていろいろ本を読んだりしたんです。読んだ本の中で「貧困」「搾取」っていう言葉がすごくひっかかって。どんな仕組みで搾取が行われるのか?と調べてみたら、遠回しにでも自分が関係してる可能性があると分かったんです。
■私たちがコンビニで買って食べてるチョコレートも、カカオの実を取る仕事をしている人たちは貧しくて食べられない、みたいな。
松井:安ければいい、だけじゃなくて、安いなりの理由があるんですよね。生産者までちゃんと対等に対価が払われているのかって考えたことがなくて。それに気づいた時、すごく焦る気持ちと、恥ずかしさを感じたんです。
知ってしまった自分が、じゃあ何ができるかって考えたとき、やっぱり長年やってきた音楽しか自分にはないなと。今まで自分が楽しんできた音楽で、音楽に助けてもらって、社会貢献ができないかなと思ったときに、Lionをやってみようと。
■そうなんですね。
松井:無知ゆえに、すぐにやらなくちゃ!と思って、そこからもう一気に始めましたよ。すぐJB’sに連絡して、こういうイベントをやりたいって。それで「世界ウルルン滞在記」で見て、前から興味があったドイツ国際平和村にもこういう趣旨でやりたいってメールを送って。そしたら平和村の人もLionの宣伝をしてくれたんですよ。
■聞いていると、かなりいきなりな感じがあるんですけど、昔から貧困とかチャリティに興味があったんですか?
松井:いや、なんの興味もなかったです。突然チャリティイベントを始めたから、今までの僕を知ってる人には絶対変に思われるだろうなと覚悟もしてたし、友達は半分くらいいなくなるかもと覚悟してやりました。
でも、やってみたら相変わらずみんな友達でいてくれるし、応援してくれるし。Lionは僕の中では本当に大きな転換ですね。Lionの活動の中でここ(Glocal)のオーナーとも知り合いましたし。
■Lionに来るお客さんはどんな人だったんですか?
松井:これから国際協力の分野に進みたい大学生とか。僕としてもそういう人に来て欲しいと思っていたのでうれしかったですね。
毎回、イベントには音楽とあわせて、国際協力をしてる人の講演会とかやったりしたんですよ。
ダンスフロアでドッチンドッチン大音量でハウスをかけて、隣のセカンドフロアではスペースを区切ってマイク使って、ドイツ国際平和村の講演会をやってました。
クラブの中に雑貨を売ったり料理を出したりするマルシェも組み合わせてやってました。生野菜の販売もして、野菜の袋を持ったまま踊ってる人がいてシュールでしたね。(笑)
■それは昼間のイベントなんですか?
松井:いや、普通のクラブと同じで夜ですね。
■普段、クラブには来ない人が来て?
松井:そうですね。
■いつもクラブに来てるような人も来た?
松井:来ましたよ。でも、そこに頼ることはしないと決めてました。
そこに頼るだけだと、もう先がないなと思ったんで。クラブ界隈だと、いつも同じターゲットで、同じお客さんを取り合ってる感じがして…。自分は新しく開拓をしていかないと、と思って。Lionに関しては全然客層も違うと思うけど、最後の方にはもう100人入りましたからね。
■100人!すごいじゃないですか!
松井:最後の方はそれくらい盛り上がったけど、今はメンバーがいなくなっちゃったんで。みんな青年海外協力隊で外国に行ったり。Lionから2人協力隊になったんですよ。
■すごいですね。特にコネクションがあったわけでもないのに、クラブで国際協力をやりたいっていう志だけで仲間を集めて、一緒にやっていったんですね。
松井:うん、一緒にやりたいなって人を見つけては一人ひとり口説きに行って。
例えば、ハイチ地震の時に藤が丘のカフェがチャリティーイベントをしているっていう新聞記事を見て。興味を持って、彼らの店に話を聞きに行ったら意気投合して。それからLionを手伝ってくれるようになったりとか。
Glocalのオーナーは、僕が書いたクラブでの国際協力やフェアトレードの活動を紹介したブログを見て、メールをくれて知り合ったんです。
■やりたいっていう気持ちが行動を後押ししてたんですね。
でも、国際協力の人はクラブとかどうでもいいっていうか、全然知らないし。ハウスの人も別に国際協力に興味があるわけじゃない、という状況だったわけですよね。
松井:けど、それが混ざることによって、お互いに興味を持てるようにしていきたいなと思ってたんで。こういう文化もあるんですっていうのを。つながりの場ですよね。今までにないつながりの場。
■松井さんは、そういうつながりの場があるといいなって思ってたんですね。
松井:僕が来てほしいと思っていた人たちは、まだクラブの楽しみ方がわからない人たち。自分も最初は音楽よりもファッションや人のつながりが楽しくてクラブに行っていたわけです。「ここに行けば、あの人たちに会える」みたいな出会いがあったほうが面白いなと。変な話、クラブでやっときながら音楽がメインじゃない、というところはあった。
■松井さんは、音楽は大切にしたいけど、音楽好きばかりのパーティも違うと思ってる?
松井:音楽好きのパーティをして、そこに新しい人たちも来るような仕組みまで持っていけるのが理想。でも、音楽だけのイベントにしちゃうと新しい人たちはなかなか踏み込みづらいのも現状。
■フェアトレードとか国際協力を広めたいというより、クラブに国際協力の人たちが来てほしい感じ?
松井:クラブにいるときはそう思う。クラブ以外で、昼間に自分たちで国際協力のイベントを作っているときは、夜の人たちに来てほしいって思いますね。
今まで考えたことなかったけど、僕はいろんな人間性に出会えるのが好きなんでしょうね。初めてクラブに行ったときも、かっこいい人たちに会えたことがすごい刺激的だったし。でも、夜遊びして会った人と同じかそれ以上に面白くてクレイジーな人に、国際協力の分野でも出会うんですよね。
その場所に集う面白い人たちをいろんなところに紹介したり、つなげたり。自分では意識したことなかったんですけど、そういう場づくりをするのが好きなのかな。
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